ジャーナリストから見たケア21~幻想のパラダイス~顧問SENSE NO.6

 柳 幸夫

当社顧問(柳 幸夫さん)が書いたケア21の理念などを盛り込んだ、エッセーを紹介いたします。

当社の社風を知る手がかりにしていたいただければ幸いです。


幻想のパラダイス

顧問SENSE No.6

地中海に浮かぶマルタ島は人口40万人余の共和国。ハリウッドのスターをはじめとした欧米のセレブたちが地中海ライフを楽しむ。しかしながら、北に隣国のイタリア、東に中東や東欧、南に北アフリカ諸国を臨む地の利から、アフリカや中東から難民、さらに東欧から出稼ぎ労働者が押し寄せる。とくに内戦で疲弊した対岸の北アフリカ・リビアからは多くの人々が訪れてちょっとしたミニコミュニティーを形成している。マルタ共和国は第2次世界大戦でムッソリーニのイタリアに組みせず、英国軍の拠点として戦った。そのため住民はマルタ語やイタリア語のほか英語に堪能でリトルブリテンと呼ばれる。大小20以上の英語学校に世界から短期留学生が訪れる。

そんなマルタ島には仕事や英語留学で滞在するリビア人はオマーンなどイスラム教の戒律が厳しくて真面目な留学生とは対照的に、〝遊学〟を謳歌する者も少なくない。ホストファミリーで同宿の17歳の少年は夜な夜な英語の勉強もしないで中心街のクラブに行って朝まで踊り明かす。「何で勉強もそっちのけでそんなに遊ぶのか」と尋ねると「リビアは内戦で若い男の半分は亡くなった。今遊ばないでいつ遊ぶのか」と何とも刹那的な答えが返ってきた。

それに比べれば、北朝鮮の脅威はあるものの、日本はまだまだ平和だ。では、本当に日本から戦争はなくなったのか。かつては交通戦争があった。多くの人々が交通事故で犠牲になった。今はどうだろう。少子高齢化戦争ともいうべきか。人口減少による生産性の落ち込みによって、米国、英国、アイスランドのような金融立国への転換が望むと望まないにかかわらず迫られている。金融立国ではITを駆使して人口減少にある程度対応できるが、介護分野などは依然、人的資源に頼らなければならない。

現在のようにモノがあふれて実体経済の裏打ちがあるうちは1千兆円を超す財政赤字があっても持ちこたえられるかもしれないが、金融を中心としたサービス産業主体の国では信用が失われれば、すべては無に帰しかねない。リーマンショックで破たんしたアイスランドがよい例だ。つまり、サービス産業に属する介護事業においては人的資源の量もさることながら、質も重要になる。実体経済の裏づけがなくなってからの介護事業は質(信用・信頼)が一層問われることになる。虐待などもってのほかでケア21が人づくりに軸足を置くゆえんだ。

                                 2018.2.28